オンデーズ香港の女性トップに聞く アジア市場拡大の手応え

眼鏡店チェーンのオンデーズ(OWNDAYS)は、さきごろ、LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)系の投資会社Lキャタルトン・アジア(L CATTERTON ASIA)および三井物産の投資事業子会社である三井物産企業投資と、上限総額30億円の増資などの契約を結び、今後5年で500店舗にすると宣言して注目を集めている。特にグローバル化は積極的で、シンガポール、台湾、タイ、ベトナムなどに加え7月に香港にも進出し、アジア市場の拡大はライバル視されている「ジンズ(JINS)」と「ゾフ(ZOFF)」より先行しており、この増資によりアジア市場の出店攻勢にも拍車が掛かりそうだ。中でも香港は7月からすでに4店舗をオープンし勢いを増す。今後の香港市場拡大を担うオンデーズ香港のトップである濱地美紗・総経理に話を聞いた。

香港店オープン後の調子は?

7月31日に2店舗を同時オープンし、立ち上がりからとても多くのお客さまに来ていただきました。うれしかったのは、日本に旅行した際に「オンデーズ」を知り、気に入ってくださった香港の人が来店していただいたことです。いいスタートが切れました。現在は4店舗あり、年内に2店舗オープンする予定です。このペースを維持できれば、年間の売り上げ目標額は達成できると思います。今後3~4年で30店舗にするのが目標です。

480~1280香港ドル(約6720~1万7920円)のオリジナルブランドのフレームを販売しており、商品は中国製と韓国製が中心で日本製も一部あります。800香港ドル前後の奇抜なラウンド系のデザインのものがよく売れており、最近は透明感のあるフレームに人気があります。日本の売れ筋とは違うものです。アイウエアトレンドが一番早く表れるのが韓国で、それがアジア全体に広がり、2~3年遅れて日本で流行するという流れが私の印象です。アイウエアのトレンドについては、アジアの中で日本が一番遅れていると思います。

日本での勤務時と違いは?

お客さまが日本の会社に対して持つ日本流サービスへの期待がとても高いことです。日本なら問題にならないようなクレームが発生し、“神対応”を求められ、サービスに対する評判がSNSですぐに拡散します。でも、働きにくさを感じたことがありません。現地のスタッフは日本企業で働くことに誇りを持っており、やる気のある優秀な人たちに恵まれています。

「ジンズ」「ゾフ」も進出している。今後の出店拡大に対して懸念材料は?

「ジンズ」が台湾に進出した際もそうだったのですが、好立地の出店場所が奪い合いになって、家賃が高騰することは避けたいと思います。また、香港では資格を持った測定士の常駐を眼鏡店に義務づけられていることから、店舗間で測定士の引き抜きが起こり、人件費の高騰につながっています。日系企業同士で利益をつぶし合わないようにすることが、お互いの成長につながると思います。

香港法人のトップに就任するまでの経緯は?

大学時代の就職活動は、ファッションと接客が好きだったのでアパレルメーカーの販売職を狙っていたのですが、就職説明会でアパレルメーカーの販売職の給料の低さに驚いて、いろいろ考え直した末、眼鏡企業に就職先を探しました。そしてメガネストアに就職し、約8年間勤務した後、11年にオンデーズに中途入社し、神奈川県の川崎ダイス店に配属されました。前職での経験もあったため、入社して2週間で店長に就任し、売り上げを2倍にする好成績を上げました。13年に、そのごほうびとしてシンガポール1号店を訪問した際、オープン初日から多くの来店客でにぎわう光景、お客さまの笑顔を見て感動し、海外勤務に興味を持ちました。そして14年、台湾に進出する際、立候補(オンデーズではマネジャーや店長を社員による投票で選ぶ人事制度がある)し、夫を日本に残して現地の責任者として赴任しました。同業他社に勤務する夫に『少しの間、勝手にさせてくれないか』と頼んだら、許してくれました。最初は3年くらいのつもりでしたが、海外勤務が面白くなり今になってしまいました(笑)。でも、2~3カ月に1回は帰国しています。

オンデーズはどんな会社?

やる気があれば、年齢・性別関係なくやりたいことをやらせてくれる、チャンスが多い会社だと思います。自分も経験を積んできて、大きく成長できました。田中修治・社長はフェミニストなので、女性の方が得をしているかもしれません。

「マルニ」創業デザイナーの娘が手掛ける「プラン C」 仕掛け人の父娘に聞く、イタリア流家族経営のススメ

2019年春夏にスタートしたイタリア・ミラノ発の「プラン C(PLAN C)」が、東京・青山に世界初の路面旗艦店をオープンした。同ブランドをデザインするカロリーナ・カスティリオーニ(Carolina Castiglioni)は、「マルニ(MARNI)」の創業デザイナー、コンスエロ・カスティリオーニ(Consuelo Castiglioni)の娘。カロリーナの父、ジャンニ(Gianni Castiglioni)がブランドの最高経営責任者(CEO)を務め、カロリーナの弟ジョバンニ(Giovanni Castiglioni)もビジネスに携わるなど、イタリアらしい家族の絆がブランドの大きな魅力となっている。旗艦店オープンに合わせて来日した父娘に、家族での経営やブランドの進捗を聞いた。

「プラン C」はデビューシーズンから国内外で100社以上の卸先が決まった。手応えは?

ジャンニ・カスティリオーニCEO(以下、ジャンニ):期待も大きかったですが、それ以上の反応がありました。特に、日本、韓国、香港などのアジア地域では大好評といっていいでしょう。ただし、やみくもに販路を拡大するつもりはありません。日本でパラグラフとディストリビューション契約を結んでいるように、各国で信頼できるパートナーと組んでいきます。ブランドの立ち上がりの時期は、アイデンティティーが非常に重要です。だからこそ、最善のパートナーと共にじっくりブランドを広げていきます。

世界初の路面旗艦店に青山を選んだ理由は?

日本での売り上げはブランド全体の3割を占め、カギとなる市場です。日本では今春、卸だけでなく百貨店インショップも3店オープンしましたが、単に商品を見せる場ではなく、われわれのアイデンティティーを表現する場が必要でした。それが旗艦店です。青山はとてもエレガントな場所。ブランドの背景にあるクリエイティビティ―を伝えるには、東京の中でも青山がベストです。19年秋にも百貨店インショップを出店しますが、急拡大は考えていません。今後3年で10店程度の出店を考えています。

カロリーナは、「プラン C」立ち上げ前は「マルニ」でスペシャル・プロジェクト・ディレクターなどを務めていた。当時と今とで、もの作りに対するアプローチは変わったか?

カロリーナ・カスティリオーニ(以下、カロリーナ):「プラン C」では年2回コレクションを発表しており、プレ・コレクションは作っていません。だから、春夏物は厚手のコートから軽やかなサマードレスまで含んでいて、半年間をしっかりカバーできるようになっています。発表の方法も、ランウエイショーではなくプレゼンテーションにしました。これがわれわれの独自のやり方です。年に2回コレクションを出せば十分なはず。もっとたくさん発表するようになっては、きっと心が疲れてしまう。今後ランウエイショーを行うことも、現時点では考えていません。

ファッション業界はもっとスローダウンすることが必要です。業界のサイクルが早いせいで、(プレ・コレクションを発表していたら)商品一つ一つの寿命がすごく短くなって、シーズンがすぐに過ぎ去ってしまう。

左下から時計周りに、ジャンニ・カスティリオーニ、カロリーナ・カスティリオーニ、ジョバンニ・カスティリオーニ、ジョバンニの妻でジュエリーブランド「アリータ(ALIITA)」デザイナーのシンシア・ヴィルチェス・カスティリオーニ(Cynthia Vilchez Castiglioni)

「プラン C」を含め、イタリアには業界のスピードから距離を置き、ブランドの核を家族でしっかり守っているブランドがたくさんある。一方で、家族経営ゆえに疲れることなどはないのか?

家族で経営していると全てクイックに決まるし、投資家などから無用なプレッシャーを受けることもありません。社員もみな家族みたいな存在です。各国のディストリビューションパートナーも、われわれのそういった姿勢を支持してくれています。

家族でビジネスをするうえで、難しいことは何もありません。われわれの会社は小さなチームで、お互いに助け合っているから肩ひじ張ることなく働けています。オフィスにはキッチンもあるから、みなで一緒に食事をすることもあります。とはいえ、各人には明確は専門領域があって、一人一人がプロフェッショナルです。

青山の旗艦店も、まるで家庭のような温かい雰囲気の店です。青山で体現しているものをブランドとして今後も大切にしていきたいし、温かみを感じるアプローチを続けていきます。

「H&M」がVIPイベントを開催 サステイナブルコレクション新作を披露

「H&M」は4月19日、サステイナブルな素材を使ったハイエンドコレクション「コンシャス・エクスクルーシヴ 2019」の発売を記念したVIPイベントを東京・南青山のライトボックススタジオ青山で開催した。会場には、山田優や西山茉希、AAAの宇野実彩子ら多くのモデルやアーティストが訪れた。

会場の展示スペースでは、海洋に投棄されたプラスチックをリサイクルした素材バイオニック®を使用したドレスや、ガラスとプラスチックを再利用したアクセサリー、オーガニックシルクとテンセル®ツイルを使用したタキシードなどレディース・メンズコレクションを展示。さらに、今回初登場となるキッズコレクションが並んだ。

ルーカス・セイファート(Lucas Seiferts)H&Mジャパン社長は、「日本はファッションだけではなく、リサイクルなどサステイナビリティの意識が高い。今後もこのようなイベントを通じて、サステイナブルなファッションを伝えていきたい」と話す。

プライベートでも仲が良い山田優と西山茉希は最新のコレクションを身にまとい、一緒にドレスアップした子どもを連れて来場。山田優は、「『コンシャス・エクスクルーシヴ』コレクションは、なめらかな肌触りでドレスでも気持ちよく着られる。しかも動きやすい素材だから、子どもがドレスアップしながらはしゃいでいます(笑)。お手頃な値段なのもさすがですね!フォーマル感がありながら、カジュアルなスタイルでも楽しめるのが嬉しい。サステイナブルなスタイルに触れ合うことで、未来について考えさせられる素敵な機会だと思います」。子どもとお揃いのドレスを着用した西山茉希は、「キッズも大人顔負けのおしゃれなドレスが多いので、娘と初めてペアルックができて感動!フォーマルなシーンだけでなく、気分をあげたい日中にも着たいアイテムが多いのもいいですね。廃棄物に手を加えることで、“幸せなものに変身する”ということを実感します」とコメント。会場はハッピーなムードで溢れていた。

「エルメス」が英でメンズイベント UTAからプライマルまで世界の著名人がインクルージョンに浸る

エルメス(HERMES)」は3月、英ロンドンで大規模なメンズイベント「STEP INTO THE FRAME」を開催し、世界から約1200人が訪れました。会場は旧郵便施設で、かつては郵便物の仕分けなどが行われていたそうです。飛び出すポップアップ式のカワイイ招待状を見ていい予感はしていましたが、オランダ人漫画家のヨースト・スワルテ(Joost Swarte)の世界観で構成された会場は、まさに漫画の世界に足を踏み入れるようなワクワク感。同ブランドが2019年の年間テーマとして掲げる“夢を追いかけて”を表現し、会場の外からすでに楽しすぎます!

イベントは、19年春夏コレクションのショーからスタートしました。フロントローには英俳優のベネディクト・カンバーバッチ(Benedict Cumberbatch)や大ヒット映画「ボヘミアン・ラプソディ」でギタリストのブライアン・メイ(Brian May)を演じたグウィリム・リー(Gwilym Lee)ら豪華ゲストが並びます。そしてモデルにはアイルランドの伝説的バンドU2のベーシストであるアダム・クレイトン(Adam Clayton)や、元オアシスのリアム・ギャラガー(Liam Gallagher)の息子でモデルとして活躍するレノン・ギャラガー(Lennon Gallagher)、英国ロイヤル・バレエ団のエドワード・ワトソン(Edward Watson)、振付家のアクラム・カーン(Akram Khan)ら、英国を拠点に活躍する文化人も多数登場。日本からは俳優の本木雅弘とエッセイストの内田也哉子の長男であるUTAが登場しました。名だたる有名人の中でも堂々としていて、かっこよかった。しかし会場が最も盛り上がったのはU2でもオアシスの息子でもなく、彼がランウエイに登場した時でした。

どこのロックスターが出てきたのかと思いましたが、大歓声の中を歩くのは、なんと英「エルメス」のバートランド・ミショー(Bertrand Michaud)=マネジング・ディレクター。照れくさそうに笑う姿を見た観客にも笑顔が連鎖し、会場は一気にハッピーなムードに包まれました。カメラを構えると、こちらにもしっかり目線をくれました。表情が最高です。コレクションは一目で上質とわかるレザーを多用しながら、全体は軽やかでスポーティー。グレイッシュなピンクやパープルにピュアなオレンジやグリーンといった色の対比が強いエネルギーを感じさせます。お祭りの一環ではあるものの、終始リラックスした雰囲気でした。

ショーが終わると、いよいよイベント会場がオープン。メンズの代表的アイテムである革靴やハット、バッグなど、それぞれのアイテムにフォーカスしたブースが並びます。とはいえ個々の歴史紹介やアーカイブが並ぶ博物館的な“お堅い”感じはなく、アートやユーモアを交えながら見て、聞いて、さわって、楽しい!と思わせてくれる仕掛けが満載です。だって、厳格なイメージのビスポークコーナーをリッチな“ア・ビスポーク・バー”にしちゃうんだから、素敵です。ちなみに僕は挑戦できませんでしたが、奥の“ON AIR”と書かれた小部屋に入ると、お酒をショットで飲んだ(飲まされた?)後に地面が超高速で回転し、フラフラになった状態で外に出されるそうです。小部屋から出てくる人たちはみんな興奮気味に大笑い。果敢に挑戦した日本の関係者は「あれはこのイベントで一番スゴかったわ」と語っていました。

ほかにも巨大コミック風の立体セットにシューズを並べた“ザ・バーズ・アイ・ヴュー”や、ハットを釣る釣り堀セットで記念撮影ができる“ハット・フィッシング・ア・ガイド”、プラネタリウムを覗くとネクタイの星座が見える“ザ・タイ・オブザーバーズ”など、クラシックなアイテムの見せ方を変えて、漫画のページをめくるようなワクワク感と共に魅力を伝えていました。大行列で入れなかったレストラン“ザ・テイスティー・エディション”も、まるでコミックの世界から飛び出してきたようです!

きれいなプラネタリウム風のセットにある望遠鏡を覗くと、ネクタイの星座が見える“ザ・タイ・オブザーバーズ”

スクリーンをタッチするとバッグなどのアイテムが浮き上がってくる“ザ・カラーズ・オブ・コスモス”

本からアイテムが飛び出す“ザ・キュリオス・ケース・オブ・ザ・ブック”

漫画風のコマ割りで旅に適したアイテムを紹介する“ザ・エンドレス・ロード”

アーティストがその場でスクリーンに似顔絵を描いてくれる“ザ・スケッチ・ブック”

きれいなプラネタリウム風のセットにある望遠鏡を覗くと、ネクタイの星座が見える“ザ・タイ・オブザーバーズ”

飲んで、記念撮影して、「エルメス」の素敵なアイテムに触れて、大満足な気分で会場を後にしようとすると、エルメス ジャパンの広報から「実は、まだサプライズがあります」との耳打ちが。いやいや、こんなに素敵なコンテンツばかりだったのに、さすがにもうサプライズなんてないでしょ?と思っていました。でも、それは大間違いだったのです。時刻は夜の9時45分。突然、DJブースのあたりから大歓声が湧きます。急いでその場に向かってみると……。

え、プライマル・スクリーム(PRIMAL SCREAM)がいるけど!56歳のフロントマン、ボビー・ギレスピー(Bobby Gillespie)がピンクのジャケットを着て目の前にいるんですけど!そこから先は興奮しすぎてよく覚えておりませんが、“Country Girl”“Swastika Eyes”“Rocks”など名曲中の名曲をばっちり披露し、英国を代表するバンドによる熱いパフォーマンスでイベントを見事に締めくくってくれました。

「エルメス」のメンズを30年以上率いているヴェロニク・ニシャニアン(Veronique Nichanian)=アーティスティック・ディレクターは今回のイベントについて、「今、メンズウエアはとてもエキサイティングな時代になっています。だからメンズの世界観を伝えるイベントをヨーロッパで開催したかった。ロンドンはスマートで面白い都市だし、男性のファッションの色合いも好き。私がいつもコレクションに込める、クレイジーさにあふれているところもいい。ロンドンのスピリットにインスピレーションを受けて、今回のイベント開催を決めました」と話してくれました。さらに「『エルメス』のメンズは品質の高さを維持することと、ブランドのスピリットを変わりなく表現することが最も重要です。これからも自由と情熱を持ってやっていきたいですね」と続けます。

ヴェロニク・ニシャニアン「エルメス」メンズ・アーティスティック・ディレクター

取材前は「エルメス」のイベントということもあり、どんなラグジュアリーなパーティーになるのだろうと少し緊張していました。でも、誰でも親しみやすいコミックの世界を用いた表現やロックバンドのパフォーマンスを通じて、あらゆる世代や国の人に価値を伝えていきたいというインクルージョン(包括性)がブランドに根付いているのをしっかりと感じ取りました。今後もメンズのイベントが控えているようなので、楽しみに待ちましょう。